ガルーシャ(エイ革・スティングレイ)にロマンを感じる|財布・バッグ・アクセサリーとして時代を超えて愛される理由

ここではエイ革の呼称にもなった18世紀フランスで活躍したエイ革職人ジャン・クロード・ガルーシャ(Jean Claude Galuchat)に敬意を込めて"ガルーシャ"と呼ぶこととします。
クロコダイルやオーストリッチ、パイソン等、それぞれ特徴のあるエキゾチックレザーの中でも、ガルーシャは宝石を散りばめたような見た目、ひんやりとした感触、武具に使用されていたほどの強度など、ひときわ個性的です。

他のエキゾチックレザーと比べて知名度が高い方ではありませんが、革製品としての歴史は古く、1000年以上も前から有効活用されてきたガルーシャ。日本人との関わりも深く、刀剣の柄の部分や、わさびおろしとしても使用されてきました。
→大好評発売中です!
サンプルや資料に触れることの多い現在、改めてガルーシャの価値を再認識しました。
見た目の美しさ・強度と希少性・メンテナンスの容易さ。クロコダイルやオーストリッチ等の他のエキゾチックレザーと比較しても引けを取らないガルーシャだけが持つ魅力があります。
ガルーシャ製品を初めて見た人はそれが何の素材であるのか答えられる方はゼロに等しいと思います。
表面は伝統的な技法で研磨され、磨かれた石のようにひんやりしており、光を反射しています。牛革やクロコダイル、オーストリッチは主成分がタンパク質ですが、ガルーシャの表面は全く異なる成分、カルシウムです。
下の写真がなめしを終えたガルーシャです。こう見るとエイの姿が想像できますね。ヒレの部分は食用として利用され残りが革として財布やバッグ、ブレスレットなどに製品化され、有効活用されています。
捨てる部分がほとんどありません。エイの恵みに感謝です。
ガルーシャの中心にはスターマークと呼ばれる斑点状の第三の目(光を感知する器官)があります。
製品化される際にも中央に配置されるガルーシャのシンボルとも言うことができます。天眼や神の目とも呼ばれていて、一体につきひとつしかありません。
吸い込まれるような存在に魅了される人がいることにも納得です。人工的ではなく、自然が作った模様は美しいですね。
冒頭にも書きましたがガルーシャは特別に誂えた献上品の日本刀にも使用されています。柄の部分がガルーシャでその周りを布で巻きつけています。
日本では当時、サメとエイの区別が曖昧で鮫皮と呼ばれていますが実際はエイの革、ガルーシャです。

日本刀の柄の部分でも使われる以外にも、鎧の内側に着用するものとしても使用されてきました。
ガルーシャは数ある革の中でも最高級の強度を誇り、「牛革20年、エイ革100年」とも言われるほど丈夫で型崩れしない性質を持っています。
ガルーシャの加工技術はエイの生息地であるタイやインドネシア、フィリピンなどで伝統工芸として受け継がれてきました。1000年も前の日本刀に使用されていたものも、当時東南アジアから輸入してきたものだと考えられています。
ガルーシャの加工はなめし・染色・縫製作業において牛革とは全くと言っていいほど異なる技術が必要とされます。
もちろん革なので一枚革の状態では畳んだり、丸めたりすることも可能ですが、表面は革の中でも群を抜いて硬く、裁断の際には小刀を、縫製の際には特別に強い針を必要とします。
その技術は、いわば、ガルーシャとなるアカエイが捕獲できる東南アジアで何世紀にも及ぶ長い時間をかけて発展してきたものであり、ガルーシャの加工は新規参入して取り扱うことが不可能に近いと言えます。
限られた地域の職人によって仕上げられる美しいガルーシャ、その希少性の高さにも魅力を感じますね。
経年変化を楽しめることが革製品の魅力だと他の読み物ページで何度も書きましたが、ガルーシャについて言えば他の革と同様の経年変化は期待できません。クロコダイルや牛革は内包された油分が時を経るにつれ、表面ににじみ出てきますが、ガルーシャは先にお伝えした通りカルシウムが主な成分だからです。
しかし、ガルーシャには他の革とは異なる魅力があります。
表面が硬いゆえに、汚れを弾き、傷がつきにくく、1000年以上も前に作られた日本刀が今現在も形が整ったまま現存しているように型崩れもしづらいと言った特徴を持っています。
汚れがついた場合は固く絞ったクロスで拭くだけで十分です。クリームやスプレーなどは基本的に必要ありません。
そのメンテナンスの容易さも人々に長く愛用されてきた理由の一つなのでしょう。
自然が作り出したその美しい模様、1000年を超えて磨かれたきた技術と希少性、メンテナンスのしやすさと言った点で、ガルーシャはそれぞれ特徴のあるエキゾチックレザーの中でも、個性的な魅力を持っています。
「ガルーシャ」
この言葉の響きにロマンを感じます。
東南アジアで鞣されたエイ革が、1000年前の日本や18世紀のフランスで重用されていたこと。時代や国境を超えて愛されてきたガルーシャに触れながら、この魅力を広く伝えたいと考えています。







